哲学的思考4

哲学的思考4 短編作 弥一は、相談業を始めて3年目。ある日、偶然駅で出会ったエレナから相談される。弥一が与えたヒントに、エレナが気づき、徐々に心を解放していく。エレナが変わるほど、全てが好転していき、弥一を巻き込み、二人は予想もしない道を共に歩み始める。事実に基づいた、哲学的思考のストーリー。 哲学的思考
哲学的思考4 短編作 弥一は、相談業を始めて3年目。ある日、偶然駅で出会ったエレナから相談される。弥一が与えたヒントに、エレナが気づき、徐々に心を解放していく。エレナが変わるほど、全てが好転していき、弥一を巻き込み、二人は予想もしない道を共に歩み始める。事実に基づいた、哲学的思考のストーリー。

 エレナと弥一は、デートを重ねていた。この日も、エレナが好きなドライブを楽しんでいた。弥一が生まれ育った街は、エレナと弥一の関係を進展させるには完璧だった。

 弥一は、

 「思い出深い場所を、エレナに案内できて、嬉しいよ。なんかすごく受け入れてもらった感じがする。」と、素直に嬉しさを表現した。

 エレナは、

 「弥一は、とってもいいところで育ったって、よく分かったわ。弥一の思い出話も楽しくって、あっという間だったー。」と、弥一への好感を隠さなかった。

 「さぁ、そろそろ帰ろうか?」と、弥一が言うと、

 「今日は、まだ弥一と話したいことがあるんだー。」と、エレナは言い、弥一の眼を見た。

 「私、弥一が好き。言葉を大事にしているところとか、感情的じゃないけど、感情を優しく表現するところとかが、自分に合ってるって思ってる。」と、エレナは優しく伝えた。

 「これからも、弥一とふたりで、たくさんの日を一緒に過ごしていきたいと思ってるの。だからこそ、今日は、弥一の相談業のことを、聞かせてほしいって思ってるんだ。どう…かな。」と、エレナは、弥一の眼を見たまま言った。

 「ありがとう。僕もエレナが好き。ひと目みた時から、どんどん好きな気持ちが大きくなってるよ。何か聞きたいことがあれば、何でも答えるよ。大丈夫。」と、弥一は、微笑みながら答えた。

 「ありがとう。祖父は、すっかり股関節の痛みがなくなって、普通に歩けるようになったわ。母と、すごねって驚いて、感謝したんだー。でも、やっぱり不思議っていうか、スピリチュアルっていうか、何となく納得できていない気持ちもあって。弥一の特別な力なのか、よく分かってないから、少し怖い気もするの。」エレナは、弥一が気分を悪くしないか心配だった。

 「そうだよね。まだちゃんと説明していなかったからね。じゃー、今日は、研究してきたこととか、臨床の経験とか、全部ひっくるめた結論っぽいことを、エレナに伝えるよ。何か隠したり、出し惜しみすることはしないから、是非聞いてほしい。」弥一も、いつになく真剣な口調になった。

 「いいよ。ちゃんと聞くね。」と、エレナも襟を正した。

 弥一は、

 「もう10年以上も前だなー。最初は、自分や家族の体調管理のつもりで、師匠についたんだ。除霊や浄霊、入神、降神、色々な技能を教わったんだ。効果を感じれたから、相談行を始めて、お客様にも使ってた。でも、自分は能力者じゃないから、イマイチ実感が得ることが少なかったんだ。それから、色々試行錯誤して、勉強と研究、臨床をずっとしてた。

 それで、今後変わる可能性もあるけど、今のところ、これかなっていう結論に至ったんだ。それは、ふたつだけなんだよね。ひとつは、認識がより大きい人が、認識が小さい人へ影響を与えるということ。ふたつ目は、楽しいことをやることだけでしか、人へ与える影響を大きくできないということ。」弥一は、言い終えると、エレナの質問のための間を置いた。

 エレナは、しばらく考えていたが、質問した。

 「弥一と始めて会って、撮影代行の相談をした時、撮影が延期になったことっていうのは…。私より大きい認識の弥一が、私へ影響を与えて、撮影を延期にしてくれたっってこと?」と、エレナは半信半疑だった。

 「相変わらず、理解が早いね。その通りというか、そういう理解をしているということね。この結論が、本当かどうかは、証明できないから。」と、弥一は、言った。

 「じゃぁ、私は、撮影代行のことを忘れて、ドライブに行く必要はなかったってこと?」エレナは、聞いた。

 「結果的に、エレナはドライブに行ったから、それも影響したことになると思ってる。」と、弥一は、答えた。

 「分かったわ。じゃ、祖父のことは、こうね。母と私で、弥一に相談したら、祖父の股関節の痛みが治って退院できて、普通に歩けるようになったのは…。より大き認識の弥一が、祖父に影響を与えたってことね。」エレナは、聞いた。

 「はい。そういう理解でいます。」と、弥一は、答えた。

 「じゃあ、その何でも変えてしまう、より大きな認識ってのは何?」エレナは、理解しようとちょっと必死になっていた。

 「うん。認識っていうのは、理解の度合い、分かっている範囲だと思ってる。例えば、小学生が、お金って大事だよねっていう認識よりも、老人が、金は大事じゃっていう認識の方が、大きいと思わない?

 自分は、人の悩みとか困りごとを解消するには、どうしたらいいかをずっとやってきたから、その点に関しては、おそらく誰よりも認識が大きいと思ってるのね。だから、どんな人でも、どんな悩みや困りごとでも、ちゃんと結果が出たんだって理解している。」弥一は、ゆっくりと伝えていた。

 「誰でも、何事にも、認識さえ大きくすれば良いわけ?」エレナは、まだ引っかかることがあった。

 「祖父が、認識が小さいとは思わないし、私も、弥一と、そんなに大きく認識が違うなんて、思えないんだけど。認識の大きさって、測れないし、分からないでしょ。」と、エレナはツッコミをいれた。

 「さすが、エレナ。ポイントは、何の認識かってことなんだ。楽しいことをやり続けていると、本当にやりたいことっていうのに出逢えると思っていて。本当にやりたいことの認識だと、より多くの人に、より良い影響が与えられると思ってるんだ。」弥一は、エレナのツッコミに嬉しくなった。

 「ってことは、弥一は、人の悩みとか困りごとを解消すること以外に、より多くの人に、より良い影響を与えることはできないの?」エレナの理解は、ほぼ十分になってきた。

 「そうだろうと思うし、そもそも、自分にとって、楽しくないから、やろうとも思わないよ。」と、弥一は答えた。

 「なるほど~。完全に理解してはいないと思うけど、弥一の言いたいことは理解できたと思う。ありがとう。ちゃんと教えてくれて。これからも、よろしくね。」エレナは、笑顔で言った。

 エレナと弥一は、この時を境に、恋人関係に発展していくのでした。

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